Grand-père luxembourgeois
Grand-père luxembourgeois
私の大切な人
私は ルクセンブルクにある小さな星付きレストランのシェフドパティシエを勤めたことがあります。
ルクセンブルクは、ベルギー、フランス、ドイツに囲まれたヨーロッパの小さな国。
レストランの調理場の中も ドイツ人 フランス人と多国籍でした。
庭師のいつも優しいおじさんや 掃除をしてくれる賑やかなお姉さん達は ポルトガル人。
自然に囲まれた場所に ぽつんとレストランはありました。
毎朝の始まりはシェフと庭師のムッシュと何気ない会話をしながら自家農園の野菜や果実を収穫することから始まりました。
レストランの建物のある屋根裏部屋を住まいとして与えられ 天窓からは季節ごとに違った広い畑や庭が一望でき 今思い出しても ワクワクするお気に入りの場所でした。
そのレストランのフランス人のオーナーシェフとマダムとの出会いは私にとって 偶然とは思えないほど 素晴らしいものでした。
ちょうど マルセイユにいたころ 縁があり雇ってくれたレストランです。
今から思うと 全然 技術的にも まだまだで しかもフランス語もままならない…
でも 負けん気だけは強い日本人の女の子。
当時のフランス人のシェフパティシエが辞めた際 オーナーシェフ夫妻に対し 私はそのシェフパティシエに負けないぐらいの腕があると なんの根拠もなく 豪語しました。
豪語した割にはレストランで昼 夜と提供している丸パンを私が焼くと技術的に未熟で 焼き上がりが 歪で美しくありませんでした。
あまりにも不甲斐なく悔しくて半泣きしそうな私にシェフはこれで良い。機械で作ったんじゃないんだから…毎日 こんなに美味しいパンが焼けるのはパーフェクトだと言ってくれました。
時には料理人のみなの前で厳しく叱り飛ばされたりもしましたが 根がとてもユニークで茶目っ気のあるシェフは 年齢を重ねても少年のような人でした。
興味のある食材を思う存分使わせてくれたり 年に数回開開催される レストラン業界の調理器具や機械の展示会があれば連れて行き 使ってみるかい?と購入してくれたりしました。
ドイツやフランスのレストランへ仕事で共に行き たくさんの貴重な経験をしました。
国籍を超え 実の祖父のようなシェフはヨーロッパ生活の中で 私に楽しむ大切さを教えてくれた様に思います。
オーナー夫妻が現役を引退し 共にアメリカ ミシガン州にある別荘で半月ほど一緒に過ごしたことがあります。
仕事から かけはなれた ゆったりとした時間が流れ 雪に包まれた銀世界の中で過ごした日々は 幸せで そしてあまりにも幻想的で忘れることが出来ません。
今思うと あり得ないぐらいの愛情をうけ たくさんの経験をさせてくれたルクセンブルクの祖父とマダム。
数年経った今でも 大きなエールとGros bisouを送ってくれます。
自分一人の力では決して ここまで来れなかったこと。
出会い 関わった人 全てに感謝。
自分が 他のひとに こんな大きな影響力を与えることができているかといえば 全くで 実際は自分のことで精一杯です。
でも 私自身が楽しく生きることが恩返しになるのかなとも思います。
私も自分なりに恩返しをしたい。
全てに愛を持って。
0コメント